活物質に関する論文を見るときに容量の値(**mAh/g)に注目しがちであるが、放電プロファイルの形とカットオフ電圧も確認しておきましょう。
例えば下図のようなプロファイルの放電曲線が得られたとしましょう。扱いやすい電池はどちらでしょう?

充放電にはカットオフ電圧の設定があって、充電時は上限電圧に達したところで定電流充電のモードから定電圧充電のモードに移行します。また放電時はカットオフの下限で放電を停止します。これらの設定電圧を超えると活物質に不可逆な反応を与える恐れがあるため、それを防止するための措置でカットオフ電圧が設定されます。
(a), (b)ともにおよそ同じくらいの容量を持っています。カットオフ上限と下限間の平均電圧に違いはあるでしょうか?(a)の方が平坦な電圧の領域が大きいため、(b)よりも高くなります。縦軸と横軸の積つまり面積の単位はV×Ah=Whとなりますので、この数値が大きい方が好まれます。(a)のような平坦な放電プロファイルを示す活物質は2相反応型の活物質に多く、電池の放電電圧がほぼ一定です。こういったタイプの活物質はLiFePO4などが代表的です。LiFePO4は3.4Vでほぼ一定の値を示します。
電池の容量の観点でいえば(a)の方が使いやすいですが、電池の残量を確認する観点では(b)の方が電圧の変動が大きいので、電圧をモニタリングすることで電池残量を的確に判断しやすいとも言えますが、電圧変動が大きい電池は扱いにくいでしょう。
低電位での反応を含めて容量を示していることはよくあるので、容量の値ばかりに左右されないようにしましょう。